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人生の「応援歌」――ブルーハーツと「すきま風」

生きる意志(「愛」)の優しさと美しさ
   ―――タナトスを打ち破るエロスの輝き




   ※我が〈僕〉たる飼い主は、今年の四月から「きょうよう(今日用)」も「きょういく(今日行く)」もほとんど無くなり、「サロさん!やりたい放題だよ!」なんて大喜び。このところ、漫画を読んだり、変な音楽を聴いてばかりいます。僕にとっても、散歩の時間が長くなったのでラッキーなんだけどね

   

   
   先週は、井上雄彦の『バガボンド』(〜37卷)を読み終え、YouTubeで、「すきま風」やブルーハーツを聴きまくっていました。きっかけは、「姉貴」が吉川英治の『宮本武蔵』を読んで『バガボンド』もということになったので、私も途中まで読んでいたものをもう一度最初からというわけです。また、音楽については、時代劇の『東山の金さん』(杉良太郎)の主題歌を聞くところから始まって、推薦動画のブルーハーツにはまり込んでしまったのです。

  それにしても、この三つ、なんとも「統一性」(?)がありません。しかし、わたし自身、この歳(「アラ環」)になっても、人格的な統一性どころか、自分自身の矛盾した性格や感情に唖然とするしかないというのが実情なのです。自分が楽観的性格なのか悲観的性格なのかも判然としませんし、また、この年齢になってはじめて、心底から〈叫んだり〉・〈吠えたり〉する気持ちが実感として理解できるようになったりもしているのです(実際、車の中で叫んだりしていますw)。学生時代、フロイトの「無意識」やフロムの「無意識の意識化」などに興味を持ったことがありましたが、わたしの心の奥底にはフロイト言うところの〈エロス〉と〈タナトス〉(攻撃や自己破壊に向かう死への欲動)双方が存在し、それらが「愛」や「トラウマ」などといった心的「経験」と現在自分が置かれている現状を媒介として様々な影響を意識に及ぼしているのかもしれません。とにかく、人間の感情というのは厄介なものです。

   ところで、困難な局面や否定的な状況に直面した時、私たちはしばしばつぶれてしまいそうな気持ちを音楽によって救われた経験があるだろうと思います。ある時は、明るい水前寺清子の『365歩のマーチ』や心が湧き立つようなバーンスタイン=ニューヨーク・フィルのマーチ(『ワシントン・ポスト』や『忠誠』や『雷神』など)などもいいでしょう。しかし、もっと「深刻」な時には、そんな「能天気」な曲はとても耳にしてはいられないと感じます。そんな時には、チャイコフスキーの『悲愴』やモーツァルトの『協奏交響曲』の方が悲しみを「浄化」してくれるのです。「否定(涙・叫び)」を媒介とした〈乗り越え〉とでも言うのでしょうか。今回はまった『すきま風』やブルーハーツも、その演歌ヴァージョン、ロックヴァージュントと言えるのかもしれません。


   まず、『すきま風』(作詞:いではく/作曲:遠藤実)ですが、杉良太郎のほか、舟木一夫、美空ひばり、森昌子、北原みれいなど、多くの歌手がカバーしている「名曲」と言って良いと思います。個人的には、本家の〈味わい〉はもちろんのこと、八代亜紀の〈情感の豊かさ〉、そして、藤圭子の〈歌のうまさ〉には脱帽してしまいました。遠藤の曲は「不器用さ」を感じさせる作りとなっており(だから、かえって歌うのは難しそう)、それがまたいいのです!そして、なんといっても、この歌が人の心を強く惹きつけるのは、いではくの詩の力にあるのだろうと思います。一部だけ引用しておきます。

 人を愛して 人はこころひらき
 傷ついて すきま風 知るだろう・・・
 
 夢を追いかけ 夢にこころとられ
 つまずいて すきま風 見るだろう・・・ 

 「♪いいさそれでも 生きてさえいれば」、いつか〈やさしさ・ほほえみ・しあわせ〉にめぐりあえる。いやはや、励まされますねえ!この曲は、日本歌謡の〈湿っぽい〉優しさの一つの到達点のように思われます。


   さて、次は、THE BLUE HEARTSです。彼らのデビューは30年前の1985年。活動期間は10年間ですから、それはちょうど日本の経済大国化(→「バブル経済」)からバブル崩壊期に重なっています。そして、さすがに私も『リンダリンダ』は聴いたことがありましたし、名曲『青空』がNHKーTVで放映された時のことも記憶に残っていました。ただ、今回、YouTubeで彼らのライブの様子を初めて見、また、YouTubeで聴ける歌をほとんど聴くことができ、認識を新たにしました。カエルのように飛び跳ねながら歌うことのできる強靭な循環器系と幅広い人々の心をとらえることのできるキャラを持った甲本ヒロト、そして、私が理解できる限りにおいて、極めて高い音楽性を持つと思われるマーシーこと真島昌利。なにしろ、この10日間、私はほとんど飽きることがありませんでした。

   ブルーハーツの楽曲は、甲本ヒロトあるいは真島昌利が作詞・作曲したものを甲本が歌ったもの、そして、真島昌利が作詞・作曲したものを真島自身が歌ったものに大別できます。前者の代表が以下の各曲で、甲本の詩の機知に富む「大衆性」と彼の歌唱力によってメジャーたり得たと思われます。

 (1)人にやさしく 1987(作詞・作曲: 甲本ヒロト)
 (2)リンダリンダ 1987(作詞・作曲: 甲本ヒロト)
 (3)TRAIN-TRAIN 1988(作詞・作曲:真島昌利)
 (4)青空 1989(作詞・作曲:真島昌利)
 (5)情熱の薔薇  1990 (作詞・作曲: 甲本ヒロト)
 (6)1000のバイオリン 1993(作詞・作曲:真島昌利)

   (1)は「気が狂いそう」から始まり、「人は誰でもくじけそうになるもの」、そして、「がんばれ」と歌う、いわばロック版の「応援歌」でしょうか。(2)は「ドブネズミみたいに美しくなりたい」から始まり、「ドブネズミみたいに誰よりも優しく ドブネズミみたいに何よりも暖かく」と〈愛〉を歌い上げます。(3)は、若者達や混声3部の合唱曲にもなっているもので、「見えない自由が欲しくて 見えない銃を撃ちまくる 本当の声を聞かせておくれよ」とか「世界中のどんな記念日より あなたが生きている今日はどんなに素晴らしいだろう」という印象的なフレーズがあります。(4)は、NHK版が出色で、ヒロトの物憂さとバックコーラスのマッシーの叫びが融合した「名曲」です。(5)は、いろいろな疑問に対する「答えはきっと奥の方 心のずっと奥の方 涙はそこからやってくる 心のずっと奥の方」そして「花瓶に水をやりましょう 心のずっと奥の方」と歌います。(6)は、「台無しにした昨日は帳消し」にして、これから「楽しいことをたくさんしたい 面白いことをたくさんしたい」と!実にいいですねえ(w)。さらに、金子飛鳥 編曲による弦楽合奏版の『1001のヴァイオリン』がまたいいのです!

   このほかにも、甲本の歌った『未来は僕らの手の中』、『TOO MUCH PAIN』、『すてごま』、『東京ゾンビ(ロシアン・ルーレット)』、『爆弾が落っこちる時』、『終わらない歌』、『ロクデナシ』、『英雄に憧れて』なども大変興味深いものです。ただ、甲本の歌も良いのですが、私は〈魂の叫び〉のような真島の詩と歌声がとても気に入っています。とりわけ、お気に入りは以下の3曲です。

 (7)チェインギャング 1987(作詞・作曲:真島昌利)
 (8)平成のブルース 1989(作詞・作曲:真島昌利)
 (9)俺は俺の死を死にたい 1993(作詞・作曲:真島昌利)

   (7)は、真島の自らを省みる力の迫力そしてそれを踏まえた前向きな姿勢が際立った作品ではないでしょうか。「世界が歪んでいるのは僕の仕業かもしれない」、「一人ぼっちが怖いからハンパに成長してきた」、そして、「生きているっていうことはカッコ悪いかもしれない 死んでしまうことはとてもみじめなことだろう だから親愛なる人よ そのあいだにほんの少し人を愛するってことを しっかりつかまえるんだ」ときます。う〜む。(8)は、実に機知に富んだ川柳のような曲で、「名誉白人」の「平成」の世がまだまだ続いているなと思わせる軽妙な曲です。また、「強行採決問答無用さ 強行採決いつでもそうだろう 問答無用で君たちクビだ」 同感!はははのはーっ!(9)は、「おれは俺の死を死にたい 誰かの無知や偏見で俺は死にたくないんだ 誰かの傲慢のせいでおれは死にたくないんだ」と自己の生と死への「自己決定権」を主張し、若いにもかかわらず「いつか俺はジジイになる 時間は立ち止まりはしない」と相変わらず自分をしっかりと見つめています。幼少期の読書体験や文学的素養も感じさせます。暇があったら是非聴いてみてください。

   それにしても、30年前「未来は僕らの手の中」と歌った彼らももう50歳を超えています。彼らは、私とは違って、「惑わず」・「天命を知る」ことができているのでしょうか。それとも、「いつまでたってもおんなじ事ばかり いつまでたってもなんにも変わらねぇ いつまでたってもイライラするばかり」(『平成のブルース』)なのでしょうか。


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SARO MURIKI

Author:SARO MURIKI
おりこうさんのワンワンです。年齢は、2018年11月現在満12歳です。見てのとおりの柴ですが血統書はありません。性別はオスで、飼い主には、朝夕、45分ずつ2回の散歩を義務付けているVIP犬、正確に言うと、VIDです。文句あっか?!

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